痛む箇所の移動

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痛む箇所の移動

 2008年4月4日。  今までは左脇腹あたりが痛いと訴えていた母が、この頃には背中が痛いと言うようになり、前ページで書いた枇杷の葉温灸をあてる位置もそれにともなって移動させていきました。(毒素を排出する腎臓と肝臓には痛みの部位関係なく温灸をあてていました)  痛む位置が移動した原因は分かりませんが、当時は抗がん剤治療を始めたことによる何らかの作用で、いい兆しならいいなと必死に思い込もうとしていたのを覚えています。  痛みであまり眠れないこともあるんよ、と話してくれた母。  温灸を当てると痛みが和らぐと言って、うつらうつらしてくれることが増えました。  毎夜、母と話しながら温灸をあてるこの時間が、私にとってかけがえのない時間になっていました。  この頃には抗がん剤の副作用も日増しに強くなっていて、しんどそうにしている母の姿をよく見かけるようになり、辛かったのを覚えています。(しんどい時も「今日は吐き気が強いんよ」と言いながらも淡く微笑む母の気丈さに泣きそうになるのを必死に堪えた時期でもあります)  そんななか、温灸をしている時間が例え束の間だとしても、母のしんどさを緩和していたならいいなと思っていました。  温灸を当てながら、心の中で母の身体の中のガンに、「消えるのが無理でもせめて母の身体と共存出来るよう悪さをするのをやめない? 母が死んでしまったら癌細胞(あなた)も生きてはいけないのよ?」と語りかけていました。  完治は無理でも寛解して欲しい。  そう願ってやみませんでした。 ―― 【完治と寛解の違い】 ■完治  治療を終えても、病気の症状が消失した状態。 ■寛解  治療をつづけながら、病気の症状がほぼ消失した状態。 このまま(治療をやめ)治る可能性もあるが、再発する可能性もある。  再発しないよう、治療の継続や定期的な検査が必要。 ――
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