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この日の研修医は服装からしてダラッとした感じで……。
足元なんて便所サンダルでした。(今までそんなの履いてる研修医さん――はおろか正規のドクターも見たことがなかったので、正直初見から違和感がありました)
でもね、でもね、服装はどうあれ、母の苦しみと真剣に向き合って……取り除こうとしてくださるお医者様なら私も父も、そんなのどうでも良かったのです。
でも……。
この研修医は違いました。
「母、痛み止めを使ったんですけど全然効かないみたいで。凄く痛がって……見ていられないのです」
そう言った私たちに、彼はちらりとカルテに目を走らせて。
「痛み止めってモルヒネだよね? 先日処方されたばかりなんだからまだ数は沢山あるでしょ? 痛いんならそれ、バンバン使えばいいんだよ」
「でも……」
「だって彼女、末期の膵臓ガンでしょ? どうせすぐ死ぬんだから副作用とかそんなに気にしなくていいと思うけどね?」
目が点になりました。
――どうせすぐ死ぬんだから。
主治医は現段階では私たち家族にも母自身にも余命宣告なんてしていなかったのに。
カルテにどこまでそういう情報が書かれているのかは知りません。
でも――。
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