バイト

1/2
前へ
/128ページ
次へ

バイト

 病気が発覚する前、母は知人夫婦がオーナーをしているコンビニで早朝〜お昼前までバイトをしていました。  母方の祖父母は運送会社を営むいわゆる自営業の家。  元々商売人の娘だった母は生来持って生まれた性格もあったのでしょう。  水を得た魚みたいにコンビニ店員を楽しんでこなしていました。  それこそ常連さんが毎日買うようなものはすぐに把握して、タバコとかその人が店内に入ってくるなりいつもの銘柄を棚から下ろして準備しておくような……そんなタイプ。  だけどガンだって分かって……抗がん剤治療とか視野に入れなきゃいけなくなったから。  楽しんで続けていたバイトも早々に辞めてしまいました。 「お母さん、今のところほとんど自覚症状ないんだけどね。症状が出るようになってからじゃコンビニに迷惑かけちゃうから」  そう言って笑った母が、何だか寂しそうだったのを覚えています。  ちなみにこのコンビニの常連に(高校〜大学生時代にかけて付き合っていた)私の元カレもいたらしいんですけど、このことが私の人生に大きく関わってきて……色々影響を与えられるようになるのはまだ少し先のお話です。
/128ページ

最初のコメントを投稿しよう!

79人が本棚に入れています
本棚に追加