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あとになって振り返れば、結局どれも敵わない夢ばかりでしたが、当時の私たちは希望を捨てていなかったんです。
それぐらい母を失うことが怖かったし、母も死ぬことを怖がっていました。
お互い、まだたくさんやり残したことがあったから。
私は母に花嫁姿も孫の顔も見せられていませんでしたし、母もそれを見たがってくれていました。
母は当時読んでいた本も読み終われていませんでしたし、今死んだら死んでも死にきれないと、よく話してくれていました。
なのに……。
今でも母はやり残したこと、気に掛けているのかなと思うことがあります。
母が好んで読んでいた山本周五郎先生の本を見かける度、母さんは彼の作品をどこまで読めたんだろう?と思ったりします。
生きていたら73歳。
まだまだ元気に動き回れている年齢です。
活動的な人だったから……きっとスマホだって使いこなしていたんだろうなぁ。
私、あちこちに行くための足にされていたかしら。
それとも私が母とお出掛けしたくて母を連れ回していたかも?
もう何処にも母を連れて行ってあげられないことが無性に寂しいなって思います。
母の手料理が心の底から恋しいです。
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