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さて、手術室から出てきた母。
意識はハッキリしていて、手術が終わってみんなの顔を見て開口一番、「お母さん頑張ったよ」って。「手術はうまくいった?」って聞いてきました。
私たちの誰も、「何も出来なかった」なんて言えなかった。
「バッチリ! うまくいったよ!」
私の嘘に、母は嬉しそうににっこり笑いました。
お母さんは頑張ったもんね。
なのに……ごめんね。
痛い思いをさせただけになっちゃった。
私たちに残された、母と過ごせる時間はあとわずかです。
たった数週間で、母に何がしてあげられるんだろう。
それを考えて考えて……。結局答えが見つけられなくて。
笑顔の母にニコニコと受け答えをしながら、ずっとずっとそんなことを考え続けていました。
あと数週間しかないと言われましたが、母に命の刻限を告げることは出来ませんでした。
もう少しゆとりがあったなら、ちゃんと話すことで母自身にも旅立ちの支度をさせてあげられたかも知れない。
でもこんなに弱ってしまった後で……残された時間がたった数週間しかないだなんて……私たち家族には伝えられませんでした。
もしかしたら母自身には分かっていたかも知れません。でも、それを明言することなんて、誰にもできなかったのです。
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