何もしてあげられなかった

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 そう言えば術後、先生が「お腹の中に直接、特殊な抗がん剤を撒いておきました」と仰いました。(本当は保険適応外の新薬だけど、何も出来なかったせめてものお詫びに、と言われました)  もしこれが効いたら、胆管の詰まりが少しは解消されるかもしれない、と。  そうなればほんの少しではありますが、消化機能なども回復出来る可能性が出てくるみたいです。  せめてもう一度家に連れ帰ってあげたいので、そうなってくれたらいいな、と思いつつ。  母が頼みの綱にしていた丸山ワクチンも最後まで続けて下さる、と。  母の希望になりうることはみんなしてくださる、と。  ――人間の治癒力は常識では考えられないくらいの力を見せてくれることもある。  お友達のひとりが言ってくれた言葉を信じて、希望を消さないよう、笑顔で母さんを支えたい。  そんなことを考えていた日々でした。
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