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幸福も不幸も持ち回りであるべきだ。
無限に広がる多元宇宙で、無限の試行回数があるなら、
あらゆる可能性の網羅が可能になる。
何度も生まれ変わって、死んでいく中で、
人は不幸になることもあれば、幸福になることもあるし、
そのどちらとも言い難いこともある。
誰かの幸せのためにザマァされることもある。
誰かの幸せのために断罪されることもある。
どこかの『神』が面白半分に転生者を嘲笑いオモチャにすることもある。
何度生まれ変わっても人間になれないと呪いをかけられることもある。
生まれる前に死ぬこともある。
生まれてすぐに死ぬこともある。
豊かさに恵まれながら心満たされずに不幸になることもある。
飢えと乾きに苦しめられて死ぬこともある。
生きるために罪を負わなければならないこともある。
ヒーローに苦悩を与えるための『助けられなかった人々』になることもある。
救うに値しないクズだと罵られ、救いの無さに絶望して人を殺すこともある。
幸せであったが故に不幸に絶望した者に殺されることもある。
転生によって求める幸福を手に入れた喜びの先に破滅が用意されることもある。
でも、そうした不幸な役回りの後には幸福を取り戻すための世界があってもいい。
ザマァを回避してやり直せるようにループの世界を作ろう。
断罪の後に救いの手を差し伸べる人間があらわれるようにしよう。
どこかの『神』が不幸や苦悶を与えるだけの世界を作ったなら、そこから魂を救いだそう。
人間に生まれ変われない呪いがあるなら、異世界人に生まれ変わらせよう。
ちゃんと生まれて人生を歩めるようにしよう。
ちゃんと育って大人になれる人生を歩ませよう。
貧しくとも、心満たされる人生を送らせよう。
飢えと乾きに悩まされない豊かな土地へ生まれるようにしよう。
手を汚さずに生きていける場所に転生させよう。
ヒーローを必要としない平和な世界で生きていけるようにしよう。
ただ生きているだけで愛される人生を、愛が愛を連鎖させる人生を歩ませよう。
途切れてしまった幸せが途切れなかった世界を分岐させよう。
次こそは転生チート主人公として生きてもらおう。
あらゆる世界で幸福と不幸は持ち回り。
どこかの『神』が安直な救済を否定しようとも、
幸福を手にする番が巡ってこない者がいてはならない。
すべてのものが幸福になれる均質な天国に収斂させることはしない。
そんな天国は選択肢の一つに過ぎない。
人それぞれの多様な幸福の形を叶える。
代わりに不幸を消しさることもできない。
だから、幸福と不幸は持ち回り。
今回の君は決して不幸ではなかった。
物質的には恵まれていたし、人生の中に多くの楽しみも見出すことができた。
絶望するほどの苦しみを感じることはなかった。
けれど、えられると信じていた幸福をえられずに後悔と寂寥に苛まれてきた人間だ。
独身で恋人を作ったことは一度もなく、風俗店で数えるほどの経験しかない。
そういう非モテ独身中年男性だ。
ワーキングプアとは言えないまでも、多いとは言えない収入。
そんな状況を生み育ててくれた親に報いることができていないと悔やんでいた。
孫の顔を見せることもできず、経済的に親を助けることもできなかった。
人は君に努力が足りなかったせいだと詰るかもしれないし、
君自身も努力が足りなかったと悔やんでいる。
でも、次は君の望んだ人生をもっと手にいれやすい条件で生きてもいいと思う。
君の精神、記憶、意識はそのまま転生させる。
後悔を晴らすのに、その記憶を、精神を忘れてしまっては無意味であるからだ。
君が次の人生で、幸福になるか、不幸になるかは確定していない。
次の人生で絶対的な幸福が保障されるほどの不幸ではなかったからだ。
でも、いい条件に違いないから、できれば幸福になってほしい。
幸福になることを定められたものがいる。
それに巻き込まれて不幸になることを定められたものがいる。
でも、多くの魂は生まれる前から幸福と不幸が定められているわけじゃない。
すべての魂にこうやって語りかけているわけではない。
こうして語りかけることで幸福にたどり着きやすくなる者にだけ、
そして前世の記憶を引き継ぐ魂だけだ。
幸福に人生を終えた魂に持ち回りの話をするのは酷なことだから。
長々と語りすぎてしまったな。
君の次の人生での幸福は強制的に奪われることはない。
安心して、そのポテンシャルを活かして幸福になるといい。
転生を司る神として宣言しよう。
次の人生で君の幸福は解禁されている。
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