自己肯定感

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自己肯定感

 昨今、自己肯定感という言葉が流行っている。私は自己肯定感が低いほうだと思う。が、この年になると自己肯定感が高かろうが低かろうがさして問題ではない。もう長年この性格と付き合ってきて特に不便は感じない。  そう思っていたのであるが、最近考えを改める出来事があった。  売り場でお客様に話しかけられてお答えしていた時のことだ。  後ろにいたお客様が突然「邪魔なんだよ!」と喚き始めた。普通に声掛けろや、と思ったが私はお詫びしてお客様と共に端に寄った。 「いけないいけない。通路を塞いでしまったな。売り場はお客様が優先。以後気を付けなければ」そう思って反省した。  数日の後、あるパートさんが同じような状況になった。  休憩室で彼女はかなり怒っていた。 「どけ、じゃねえよ! こっちは遊んでんじゃねんだよ、仕事してんだよ!」  ーーこれが自己肯定感の高い人間! 仕事をしている自分を全力で肯定している!   私は感動した。  が、私はひとつのことに気づいた。そもそもお客様に対して私が怒るのは面倒ではないか。お客様は神様である。人間界に身を置く私の今後の人生にかかわりはない。  かくして自己肯定感を上げる努力は断念した次第である。
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