日本料理は目で食べる

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日本料理は目で食べる

「ちょっと! これじゃあ食べられないじゃないの!」  会計を済ませたお客様が肉のパックを持ってやってきた。  見ると、薄切り肉がパックの片方に派手に寄ってしまっている。どうやら、レジの者が傾けてしまったらしい。 「いや、普通に食えるやろ」と思ったが、お取り替えをしようとパックとレシートをお預かりした。  食えるが、そういう問題ではない。日本の料理は目で食べると言われている。見た目も重要だ。せっかくのお肉を目の前でこんなふうにされてしまっては、お客様の失望もいかばかりか。  特に、その肉は薔薇とまではいかなかったが、きれいに盛り付けられていた。盛り付けた精肉の担当者にも申し訳ない。  きっと技術を磨いて、心をこめて盛り付けたに違いない。  処理をしようとレシートを見る。  レジを打った担当者は、精肉部門からのレジ応援者だった。
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