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「ある日、その美しいお姫様に帝が求婚!帝の命令はけして逆らうことができません。しかし、実はこの時お姫様はこっそりと農民の男性と逢引を重ねていて、お腹にはその農民の男性の子供が宿っていました。激怒した帝は、その子供をおろすようにと女性に言います。絶望した女性は、農民の男性と共にこの池に身を投げて亡くなったのです……悲しい伝説ですね」
――ふーん、そうなんだー。……僕ちっちゃな頃からこの町に住んでるけど、そんなオハナシ全然聞いたこともないんだけどなー。
僕は心の中でツッコミを入れる。
そもそも、その伝説の内容からして時代は江戸時代よりも前っぽい雰囲気であるが。昔の人って、今の人間達のようにほいほいセックスしたりとかできなかったのではなかろうか。そもそも、高貴な身分のお姫様には簾ごしに逢うのが精いっぱいだったような時代もあったはずだ。
それと、堕胎って昔の技術で簡単にできたんだっけ?ということも謎である。
まあようするに、全体的に伝説がガバい。なんかこう、誰かが面白半分で作った感が否めない。
「飛び込んだ二人の地で、池は真っ赤に染まりました。そして、彼等の遺体はこの池の深い深い底に沈み、どれほど探しても見つけられなかったということ……。以来、彼等が飛び込んだ午後三時くらいになるとこの池は真っ赤に染まってしまのだそうです。そして、それを見た人は呪われてしまうのだとか……!ひゃあああ、怖いいいいいいい!」
大袈裟に騒ぐメグちゃん。
――ああ、どっから突っ込めばいいんだこれ。
僕は呆れ果てる。
そもそも飛び込んだだけではさほど血は出ない。池が血の色に染まるほど流血するってどんだけだろうと思う。というか、大きさはそこそこなので、この池全体を染めるほどの血の量といったら相当なものだろうに。
もっと言うと、この池は広さのわりに深さはたいしたことない。一番深いところでも、2メートルから3メートルくらいだと聴いている。深く深く沈んで遺体が見つからない、というほどではけしてないのだが。
――ていうか、怖いって思うなら取材しに来るなし。
はああ、と何度目になるかもわからないため息をついた。
ヒマをしているもう一人の女性が、しれっと煙草をポイ捨てしたのを見たから尚更に。
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