~わが家と隣家の庭の構造~

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~わが家と隣家の庭の構造~

「お隣の景子お姉ちゃんと箱ブランコ」 ~わが家と隣家の庭の構造~ ピアノを弾くきれいな女の人は、 孤独な人生を辿る・・ 僕は子供の頃、ある人の半生から、 僕だけにしか理解できない教訓を学んだ。 遥か昔、 隣近所・・人と人の距離が、 今より近かった時代のことだ。 夕方、家の勝手口の呼び鈴が鳴る。 勝手口は木戸だ。マッチ棒もしくは爪楊枝で開く。 ・・僕は誰なのか確かめもせずに出る。 木戸をギイッと開けると、 デブッとしたおじさんのニッコリ顔。 隣の家のおじさんだ。 「いつもすまんな・・ほな、入らせてな」 言ってる先から体が戸の中にもう入っている。 会社帰りのおじさんは僕に断り、 そのままわが家に入ると、 わが家の裏の庭に回り、 自分の家の庭を抜けて帰っていった。 しばらくするとまた隣の・・ 今度は学校帰りの隣の末っ子だ、 更に、買い物帰りの隣の母親が・・ これはどういうこと?  何のことか説明しないと分からない。 これは昭和のささやかな慣習の一つだ。 いや、僕の家と隣の家だけの慣習だったのかもしれない。
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