私はどんな色にでも染まることが出来ます

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 日本に戻ってから、三日が過ぎた。  お母さんとお父さんはすごく優しくて、「しばらくは休んで、これからのことはゆっくり考えたらいいよ」って言ってくれた。  専門学校にでも行ったらとか早く就職しなさいとか急かしてくることもなかったし、オーディションに落ちたことを根掘り葉掘り聞いてくることもなかった。  本当にすごくありがたくて、嬉しかったけど、余計に申し訳なく感じる。お母さんたちを安心させるためにも早くちゃんとしなきゃって思うのに、何にもやる気が出てこない。  今日も朝からずっとゴロゴロしてばかり。昼間なのにスマホをいじりながら、ベッドに寝転ぶ。    セミファイナルで落ちた私のことなんて誰も話題にしてないと思うけど、なんとなくエゴサしてみる。そうしたら、意外にも私のことを話してる人たちがたくさんいた。 『ユキナが落ちちゃって残念。応援したのに』 『ユキナは他の子たちより個性は薄かったけど、その分何にでも合わせられたよね。カメレオンみたいにステージごとに変化するから、毎回見るのが楽しみだった』 『ユキナがメンバーにいると、安心感があった』 『いつかまたどこかで会えることを楽しみにしてる』  こんな私のことを応援してくれてた人もいるんだ……。  そう思ったら嬉しくなって、涙が滲んだ。オーディションに落ちた時も泣かなかったのにね。  カメレオン、か。  自分のカラーを持ってないって言われたけど、そういう風に捉えることも出来るんだね。  毎回コンセプトごとに自分を変えて、今回はこんな風にしようかなって考えるのもワクワクして、どのステージも楽しかったな……。  私、やっぱりもう一度ステージに立ちたいよ。
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