私はどんな色にでも染まることが出来ます

3/3
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
 二ヶ月後、私はまたオーディションを受けていた。今回は韓国アイドルを目指すものではなく、日本のドラマの主役を選ぶオーディション。  アイドルを目指して挫折した子が再起していくストーリーで、ちょうど今の私にも重なるところがある。今回は演技慣れした女優ではなく、新鮮さのある一般人から選びたいということで、一般公募から主役が選ばれる。これだ!と思い、応募することにしたんだ。  書類選考と二次三次を通過し、ついに最終選考。審査員たちの前に立ち、私は自分の名前を告げる。  そうしたら、審査員の一人が淡々とした表情で言った。 「自己アピールをしてください」 「個性が薄いことが、私の個性です。強い個性がない代わりに、私はどんな色にでも染まることが出来ます」  私はにっこりと笑顔を作り、堂々とそれを口にする。  19歳、中卒、資格も個性もない。  でもね、私は何もしてこなかったわけじゃない。ちゃんと努力してきたんだ。  歌だって歌える、ダンスだって踊れる。  演技だって出来る、バラエティだってきっとこなせる。  どんなグループにでも、どんなステージにでも馴染むことが出来る。  どんな色にだって染まって、演じてみせる。  アイドルにはなれなかったけど、私は私に合ったステージにもう一度立ってみせる——。         【完】
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!