私はどんな色にでも染まることが出来ます

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 成田国際空港行きの飛行機のなか。変わりばえのしない空を窓から眺め、私はため息をつく。  これから、どうしよう。  お正月と大型連休をのぞいたら、日本に帰るのは約五年ぶり。でも、日本に帰っても、何にもすることがない。  あのまま韓国にいたところで、私の居場所なんてなかったけど……。  五年前、私はとある大手芸能事務所からスカウトされ、中学卒業と同時に韓国に渡った。  練習生だった五年間、デビューのチャンスは何度かあったんだ。でも、いつもデビューの話が流れて、気がつけばもう19歳。  同じぐらいに入ってきた子たちはもうデビューしてるか、諦めて事務所を退所しちゃった。私はどうしても夢を諦めきれず、ずるずるとこの年まで残ってたけど……。  三日前、最後のチャンスだと思って受けたサバイバルアイドルオーディションに落ちた。あと一歩でファイナルという、セミファイナルで脱落。  セミファイナルのステージで歌とダンスを披露したあと、審査員の先生にはこう言われた。 「あなたは、先輩を真似してるだけ。あなたのカラーが見えてこない。 あなたはスタイルも良くて顔も可愛い風だけど、それだけで勝負出来るほどでもない。歌もダンスも、全部中途半端。あなたは、何がしたいの?」  ショックだった。その通りだと思ったから。  五年間、私は毎日休まずレッスンをがんばってきた。  歌も、ダンスも、ラップも、韓国語も、演技も、表情も、体型管理も。全部全部手を抜かずにがんばってきた。  でもね、私ってぜんぶ中途半端なんだ。  昔ながらの定番の可愛い系とセクシー系、今流行りのガールクラッシュもこなせるよう、先輩アイドルを見てたくさん研究した。    全部一通りはこなせるけど、結局それだけ。私は真似してただけなんだって、思い知らされた。自分のものに出来てなかった。だから、今までデビュー出来なかったんだって。  アイドルになるような子たちは、もともと練習生の時から自分をしっかり持っていて、自分だけのカラーを持っている。  168cmと背もそれなりに高く、ステージ映えのするカラダ。顔もまあまあ可愛いものの、ビジュアル担当出来るほど飛び抜けているわけでもない。  歌もダンスも出来るのに、メインボーカルやメインダンサーを任せてもらえるほどじゃない。  誰とでも上手くやっていける性格だと自分では思っているけど、特別強い個性はない。  私は、カラッポ。なーんにもないんだ。  アイドルになることだけを目指して生きてきたから高校も行ってないし、これからどうしたらいいんだろう……。  五年前に同じ飛行機に乗った時は希望しかなかったのに、今はもう何の感情も湧いてこない。  悲しいのか、辛いのかもよく分からない。  ただ、疲れたな……って。
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