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ザーコンは正直者
指定の時刻、指定の場所。
大通りに面したカフェにオウ・リョウは現れた。
「お待たせしました、貴方がザーコン様?」
「う、うむ、そなたがリョウ殿であるな」
「はい」
同じような年齢、中年太りの男が2人向き合って座る絵はオープンカフェに似つかわしくない。
しかし2人ともそんな事を気にする素振りは無くリョウは確認作業に入った。
「私の行いを知ったうえで、告発するどころかあやかりたい、と?」
「うむ、そなたが金箔の仕入れと偽って金銭を不正に授受している事は明白。しかし告発したところで吾輩に何の利益も無い。むしろそなたのバックに大物がいれば、吾輩は消されるかもしれん。それならば吾輩も仲間にいれてほしいのである」
オウ・リョウのバックにはタマトボウという超大物がついている事も知っているし、ライズの忠臣であるザーコンがライズを裏切って他国の悪事に加担など絶対にしない。
ザーコンは惚けるのがものすごく苦手だ、しかしやるしかない。
オウ・リョウの懐にスパイとして潜り込み、不正の元凶までたどり着かなければならない。
「なるほど、貴方は聡明な方の様だ。確かに私のバックには貴方が想像もつかない様な人がついていますよ」
「うむ、キン家ならば多少の不正はもみ消せるであろうからな」
「なっ⁉既に知っているのか⁉」
「え?・・・あ!いやいやいや、違う!違うである!!もしもキン家なら凄いなあ・・・と想像を言っただけである」
「な、なるほど。しかし貴方はマイン領事館の職員、この計画に加担すればもうマインには帰れませんよ。その覚悟はおありかな?」
「吾輩の主君はとても素晴らしいお方で、吾輩の長所を上手く引き出してくれている、他の仲間も気が良いやつらばかりで吾輩の失敗を咎めたりせずフォローしてくれる。それにマインの花屋にはタカネ・ノハーナというめんこい娘がおってのう!何とかお付き合いできんかと悩んでおるのじゃ!何とかこの任務で成果をあげて、それを手土産に交際を申し込もうと思っておる!!」
「つまり故郷に帰りたくて仕方ないのですね?」
「・・・あ!違うである!!!故郷には何の未練もないである!!!」
「は、はあ・・・ま、よろしくお願いします」
リョウは握手を求めザーコンが応じる。
温くなった珈琲をぐいっと一気に飲み干すとリョウは二人分の会計を済ませて出ていった。
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