藍の森ホスピス

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 木漏れ日が窓から差し込みます。 さやさやと葉擦れの声が聞こえてきます。  坊やはうつらうつらとベッドの上でまどろんでいます。  お母さんはそっと坊やの髪に触れて言いました。 「坊やの呼吸が楽そうだわ」 「ここは空気がいいですからね」 若い看護師がニッコリと笑って答えます。 「お昼寝ばかりだと、また夜眠れなくなるのじゃないかしら?」   案ずるお母さんを、看護師は優しくたしなめます。 「眠るにも体力が要るんですよ? 眠れるときに寝て貰えばいいんです」 「そうよね……発作を起こして苦しんでいた夜に比べれば、ここは天国だわ」 「私ども『藍の森ホスピス』では、患者様が穏やかに過ごしていただけるよう万全を尽くしております」 「ええ、ありがとう。感謝しているわ。 でもね、この藍色の森は夜が暗くて深くて、坊やが飲み込まれてしまいそうで怖いのよ」  お母さんはそう言って、小さなため息をつきました。
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