お迎え

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お迎え

 満月の夜、分厚いカーテンに閉ざされた真っ暗な部屋の中で、坊やは不意に目を覚ましました。  「フィフィフィフィ リュリュリュリュ」 窓の外から誘うようなナイチンゲールの声がします。  坊やはそっとベッドから抜け出しました。 カーテンを引くと、柔らかな月の光がキラキラと部屋の中に飛び込んできました。  坊やは少しばかり驚いてとっさに小さな手で両の目を隠しました。  やがて優しい月の光に促されるようにそっと手を下ろすと、ゆっくり窓を開けました。 「フィフィフィフィ リュリュリュリュ」  ナイチンゲールの声がとても近くに聞こえます。坊やは嬉しくなりました。 「ねぇ、メリーベル! ナイチンゲールが来たみたい!」  坊やはベッドに戻って羊のメリーベルを抱き上げました。  走っても胸は痛くありません。息もゼイゼイ途切れたりしません。  坊やは嬉しくなってメリーベルと一緒に踊りだしました。
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