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突然、若い女の声がした。
振り返ると、二十代前半の、にこやかに笑っている可愛らしい女がいた。
「ああ、春木さん。こんにちは」
貴文が、笑顔で挨拶した。
あたしは、急に不安になった。
「だ、だれ?」
あたしは、慌てて貴文に訊いた。
「同じ会社の部下の春木理奈さんだよ」
貴文が、あたしにそう説明すると、理奈は、あたしに向かって、にっこり微笑んで、言った。
「課長の奥様ですよね?」
「え、ええ」
あたしは、引き攣った顔で、答えた。
貴文は、今、カッコよくなって、別人のようになっているはずだ。
それを、見破るとは?!
「課長、別人みたいに素敵ですけど、私は、普段のぼさぼさ頭で、よれよれのスーツ姿の課長も可愛くて、好きですけどね」
と、理奈は言った。
な、な、なんだと?!
妻の前で、人の旦那を「可愛いくて好き」だと?!
これは、完全なる、宣戦布告ではないのか?!
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