ACT.2

9/10
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
 その日の昼過ぎに帰って行く西風親子を見送った。  静流が用意した土産を手渡しながら、省吾が西風の女房にくれぐれも宜しく伝えてくれと言っていた。  静流が貰ったブーケを見て泣いて喜んだと。必ず結婚式で使わせてもらうからと。 「本当にわざわざありがとう兄ちゃん、悠斗。今度は奥さんも連れて来てくれよ」 「あぁ、次の出産祝いにはそうする」  西風の言葉に省吾が照れていた。    走り去る西風の四駆の窓から顔を出して、悠斗が手を振る。 「静流ねーちゃん、またね~!!また来るからね〜!!」 「うん、待ってるからねー!!」  すっかり静流に懐いた悠斗が、静流の名前だけを呼んで手を振っていたのが妙に笑えた。 「現金なやっちゃな~悠斗は」 「可愛いわよ、お父さん」  静流が笑う。省吾も笑っている。 「静流、中に入ろう。風が冷たいから」  静流の肩を抱いて家に入る省吾。  その二人の後ろ姿を見ながら、自分が初めてこの二人が一緒に歩いていたのを見掛けた10年前を思い出す。    二人共とにかく小さくて、大荷物抱えた省吾はまるで紙袋が歩いているかのようだった。   その構図のまま大人になって、夫婦になって。  今度は親にもなろうとしているこの二人…      ――俺の宝物だ。  生命に代えても護りたい俺の大事な者たち。    護りたいものがある今の俺は、最高に幸せな男なんだな。      本当に心から思った。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!