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その日の昼過ぎに帰って行く西風親子を見送った。
静流が用意した土産を手渡しながら、省吾が西風の女房にくれぐれも宜しく伝えてくれと言っていた。
静流が貰ったブーケを見て泣いて喜んだと。必ず結婚式で使わせてもらうからと。
「本当にわざわざありがとう兄ちゃん、悠斗。今度は奥さんも連れて来てくれよ」
「あぁ、次の出産祝いにはそうする」
西風の言葉に省吾が照れていた。
走り去る西風の四駆の窓から顔を出して、悠斗が手を振る。
「静流ねーちゃん、またね~!!また来るからね〜!!」
「うん、待ってるからねー!!」
すっかり静流に懐いた悠斗が、静流の名前だけを呼んで手を振っていたのが妙に笑えた。
「現金なやっちゃな~悠斗は」
「可愛いわよ、お父さん」
静流が笑う。省吾も笑っている。
「静流、中に入ろう。風が冷たいから」
静流の肩を抱いて家に入る省吾。
その二人の後ろ姿を見ながら、自分が初めてこの二人が一緒に歩いていたのを見掛けた10年前を思い出す。
二人共とにかく小さくて、大荷物抱えた省吾はまるで紙袋が歩いているかのようだった。
その構図のまま大人になって、夫婦になって。
今度は親にもなろうとしているこの二人…
――俺の宝物だ。
生命に代えても護りたい俺の大事な者たち。
護りたいものがある今の俺は、最高に幸せな男なんだな。
本当に心から思った。
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