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翌日、朝
「俺ね、静流さん。ずっと真さんがうらやましくて。俺も息子が出来たら、真さんみたいにトラックに乗せて歩きたいってずっと思っていたんです」
西風は言い、静流に淹れてもらった濃いコーヒーを顔をしかめて飲む。
昨日の昼過ぎから夜中近くまで飲み続けた俺らは、朝になっても当然食欲など有るわけもなく。
一人元気に朝飯を食べる悠斗の傍らで、大人3人は揃ってコーヒーだ。
「省吾ね、初めて真さんが連れて来た頃はメチャメチャ可愛かったんですよ。いつも真さんがおぶってて。歩けるようになってからもずっと真さんにくっ付いてた、真さんも可愛いくて仕方がないって感じで」
「おい西風、あんまり恥ずかしい話を静流に教えるなよ」
何かヤバい話が出たら大変だと、俺は西風を牽制する。
あの頃は子育てに必死だったから、思い出すと恥ずかしい話も結構ありそうだ。
「いいじゃないですか真さん。静流さんも聞きたいよね」
「はい、是非!お父さんも省吾もその頃の事はあんまり話してくれなくて」
…静流、話さないって事は、聞かなくてもいいって事だから。
まぁいいか、省吾も諦めてあさっての方向を向いてるし。
「とにかくね、真さんが楽しそうだった。それまで俺が知ってる真さんは、ケンカっ早くていつもつまんなそうな顔してて。無線でも結構無愛想な人だった。でも、義理人情に厚い人なのは知ってたんだ」
そうだったかな、ん〜ちょっと昔の話すぎて。
「あの当時は真さん、まだフリーの運び屋で。自分でトラックを持ってやってたし、仲間がトラブルに巻き込まれるといつも真っ先に助けに駆けつけるし」
ようするに暇だったからな。
そういう話に目が無かった、だから真っ先だったんだよ。
「いざケンカになるとこれが強いのなんのって。相手が刃物持とうがバット持とうが、素手でなんでもぶっ飛ばす。さすが『烈火の真』本当にコールに恥じない人だった」
あ~恥ずかしい、これから孫が生まれようって男の話じゃないわ。
無線コール変えようかな、大泉逸郎かなんかに。
「その人がいきなり自分のトラック売って、収入が安定する運送会社に勤めちゃって。なんだなんだと思ってたら、今度はいきなり息子連れて現れちゃって。こっちは展開に付いて行けなくて大変だったよ」
気がついたら省吾まで真剣に聞いてるし。
お前ら夫婦して何?
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