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そして翌日。
俺は眠い眼をこすって朝焼けのホームに立っていた。
実は今日も夜からきっちりと仕事だ。
見送りは省吾。凄く眠そうだ、しかも省吾は早出で、これからまっすぐ仕事に行くという。
がんばれよ、新米親父。
「別に見送りはよかったのに。もうちょっと寝てた方が良かったじゃん」
「そうは行くかよ、どうせ次いつ会えるかわかんないのに」
「ばか、結婚式に呼ばない気かよ?」
「あ、」
俺は笑う。相変わらずだよ省吾、お前は。
――そして始発列車がホームに滑り込んで来た。
「子供が生まれたら連絡よこせよ!待ってるからな!」
すぐに発車のベルが鳴る。
「雅之!」
「ん!?」
「俺、がんばるから!静流を幸せにするから!!雅之の…!」
ドアが閉まる。省吾の最後の言葉が途切れた、でもその言葉は聞かなくても解っているから。
俺は省吾に向かって手を振った。ゆっくりと列車がホームを滑り出す。
省吾がしばらく列車を追って小走りをしていたが、それもやがて見えなくなった。
加速の付いた列車が故郷の町を後にして行く。
「雅之の分まで幸せにする、だろ……」
俺は自分の眼を手で覆い、省吾の途切れた言葉を綴った。
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