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その年の夏、俺たちは省吾の傷の一つに触れる事となった。
「心中事件の生き残り」である事をある男に暴露され、その事で幼い頃から辛い思いをして来た省吾の傷口を更に広げようとする最低な出来事だった。
俺たちは、大事な仲間である省吾を守りたくて…
だけど結局、省吾は自分で自分の身体を傷つけ、落とし前をつけた。
省吾を守りたかった俺たちは心底がっかりして…でも、その気持ちは痛いほど解って。
省吾からその話の内情を聞いた時、どう反応していいのかわからなかった俺たち。
その中で唯一、静流だけが動いた。
【バシーンッ!】
いきなり省吾の頬を平手で打った静流。
あっけにとられる俺たち。
「大ちゃんの分!まーちゃんの分!」
俺たち全員分の名を呼びながら、きっちりと省吾の頬に往復ビンタを喰らわした静流。
まったく信じられない光景だった。俺たちは呆気に取られるのみで。
「省吾なんか大っ嫌いっっ!」
多分この世で一番、省吾が聞きたくなかった言葉のおまけ付き。
静流、お前本当に悔しくて…悲しかったんだな。
お前がそんな風に感情を露わにして、他人に向かって行くなんて俺は初めて見たよ。
そんなに省吾の事が大事だったんだな。
俺もだよ。
俺たちもだよ。
けどきっと、ほんのちょっとだけ静流の気持ちは俺たちのと違っていたかもな。
静流、本当はお前…省吾と一緒に泣いてあげたかったんだろう?
今の省吾じゃなくて、小さいまま傷だらけになっていた幼い省吾を抱いて、一緒に泣いてあげたかったんだろう…?
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