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「羽鳥さん、お久しぶりです」
省吾も外に出てきた。親父二人がでかい包みを相手に苦戦してる姿を見てぎょっとしている、重くはないんだけどとにかく丁寧に扱わないと。
「おう省吾、結婚おめでとう。お前はそっちを持て」
「あ、はい」
言われるままに絵を持つ省吾、そのまま家の中にそれを運び込む。
「省吾、これはとりあえずお前の部屋に入れろ」
「わかった」
前を行く省吾が自分の部屋に絵を慎重に運び入れる。2階が出来てから元々の省吾の部屋はちょっとした物置だ。
「残りも一気に運んじまおう」
昭夫が出て行く。
「親父、これ一体なんだよ」
「ああ、後で話すよ」
とりあえずもう一枚有るし。あれ?3枚?
「ほら、早くしろ。これはちょっと小さいから二人で持てるだろう」
多分、こっちは俺の不動明王だ。俺と省吾にワンボックスカーの中から包みを差し出す昭夫。俺たちがそれを受け取ると、昭夫は一回り小さい包みを抱えて車を降りた。
包みを運ぶ俺たちの後ろから昭夫が続く。
「よし、これはあとでゆっくり開け。管理は俺の実家でおふくろがばっちりしてたから、絵のコンディションは最高な筈だ。そんでこっちが俺から省吾と嫁さんに結婚祝いだ、開けて見てくれ」
言われるまま壁際に置かれたその包みを省吾が解く。厳重に梱包されたその中から、新聞を広げた大きさ程の一枚の絵が現れた。
紺色の可憐な花…俺はあんまり花に詳しくないけど、さすがにこれは分かる。
朝露が光る朝顔の花だ。
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