時代遅れの男たち

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「何やってんだ鯉さん!?お前、仕事は!?」 「ん?やってるやん。東京に引き取り行っての帰り足よ」 「じゃなくて!!」  西風も絶句してる、弁護士の仕事の方だって!! 「まだバイザー新しくした時の借金がサファリに残ってるやん。働かんとなぁ」  いや、あの綺麗にエッチングで仕上がった自慢の特注バイザーか?あれスゲぇよな、俺も欲しい…じゃなくて!! 「パーツ屋の借金どころじゃ無いやんか。おま、弁護士の仕事は!?」  ヤバ、俺まで大阪弁感染(うつ)ってる。 「冬樹の件がやっと終わったんや。後は佐伯に任せてきた。そりゃあこっちに戻ってくるよ」 「嫁さんとか嫁さんの親とか」 「嫁は好きにして良いって。どうせ言っても無駄だって分かってるからなぁ、親父殿は…」  鯉さんが一瞬、言葉を選んでいるような。 「どうせ事件選んで受けるような婿だから、お前に相応しい案件が来るまで好きにしてろとさ。子供が絡んだ事件なら今でも本気出せるのは分かったからって。けど、今はお前は要らん、稼ぎにならんて。要するにクビだな」  鯉さんがガハハと笑う。いや、それはなんというか、違うでしょうが。  やっぱりスーパードライの弁護料がいけなかったんだろうが。もうちょい色をつけてやれば良かった。 「うん、でも。きっと又子供が泣いてるような案件があったら行くかも知れんな」  うん? 「俺はトラック乗りの境川鯉太郎で、この仕事も生活も気に入ってる。けど今回、それだけの人生じゃなくても良いんやと思えたんよ。せっかくの子供の人生を、良い方にも変えられる力を俺は持ってたんや。だからその時はいく」  鯉さん、本当に…本当にあんたって人は。  本当に凄い男だよ。  スーパー弁護士…いや、スーパートラック野郎だよ。但しそのスーパーはスーパードライのスーパーだけど。  けど本人は、それを案外嬉しがるかも知れないな。 「それより省吾は元気か?今度大阪連れて来てや。うまいもんめいっぱい食わせちゃるからな!!」  鯉さんがトラック野郎を辞めないで居てくれた事が、本当は何よりも嬉しい俺達だった。
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