二、視えざるもの

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 学校までの道のりをみんなが歩いていた。舗装されていない山道。通い慣れてる筈の通学路は、今の私には果てしなく感じる。ランドセルのベルトをギュッと掴んでやや俯きながら歩く姿勢は、思えば家の玄関から一度も崩していない。  「おはよー」と口々に言う声があちこちから聞こえてきた。自分に向けられたものじゃないと知っているから、ことさら下を向いて歩みを進める。 (モモちゃん、元気ないね?) (最近見かけなかったけど、何かあったの?)  何か言ってきても、見ないし聞こえない振りをする。ごめんね、構ってあげたいけど出来ないの。だってまわりにいる誰かに見られたりしたら、また怖がられるから。変な噂が立って、今よりもっと嫌われちゃうから。  もう何が聞いていいものか駄目なのか分からなくなっていた。  私は堪らず、その場を振り切るようにして学校へと走り出した。
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