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たまに思うことがある。
例えば、私をここではない何処かへ誘おうとするものがいて、むしろそのために、私だけに姿を見せていたのだとしたら、今の私なら迷わずそっちの世界を選ぶだろう。
みんなには見えない、今いるみんなのいない世界に行きたいと願うことがある。
そう思いたいくらい、そう思わないとやっていけないほど、私は苦しんでいた。
自分でもどうしたらいいか分からなくて、このまま消えてしまいたくなることが今でもたまにある――
みんなが仲良く出来る世界はきっとこの先も訪れない。そんなことはわかっている。
それでも私には視えたから。視ようと目を凝らしてやっと視えたのではなくて、当たり前にすれ違うようにしていつもそばにいたのが分かったから。
なんの隔たりもない中、あったとしてもそれすら気付かない状況の中で、二つの世界がちょっとでも重なる現実があったらと、今でも心のどこかで夢見てしまう。
手と手を取り合う。そんなことがもし出来たのなら、
こんどこそ私は目を逸らしたりなんか絶対にしない――
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