六、懐かしい奇妙な扉

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 果てしなく感じていた小学校生活はようやく終わりを迎え、私も自動的に中学校に上がった。  中学になっても私の引きこもりとまではいかない不登校癖は続いていた。  校舎が変わっただけでクラスの顔触れはほとんど変わらない。田舎ではよくあること。  ちなみに通学路も通学時間も長くなって、私の不登校気味に更に追い打ちをかけた。先生が変わっただけで、私も、私のまわりも変わらない。私が長く休むと麻衣ちゃんがお便りを届けてくれるのも変わらなかった。  でも変わったことが一つ。中学になると、私の噂話だけが一人歩きしていた。  みんなに視えないものが視えていた私。それに加えて今度はイタコのように霊を自分の体に憑依させて、気に入らない誰かを呪っている。とかいうものだった。呪うと聞いて小学生の頃、教室の誰かに言われた時のことを思い出した。 『怒らせたら呪われるよ』  正直今でも私はあの言葉に捕らわれている。  今日も学校を休んだ。  壁に掛かった中学校の制服を見て一つ溜息をついた。変わっていないのはきっと私だけだ。あの日からずっと小さくうずくまったままで何一つ進めていない。顔を上げられず今も真っ暗な世界から抜け出せないでいる。そしてこれからも続いていくんだろうな。  再来年には私も高校生になる。この間中学の入学式だったのに、もう高校の話。小学生の頃はまだまだずっと先の将来の話だと思っていた。学校を休んだ一日はとても長く感じるのに、不思議な感覚に陥るようだった。  通信制にしたらどうかと母さんに言われた。あくまでも選択肢であって、決めるのは自分。そう言いながらも母さんが集めた資料が私の学習机の上に積み上がったままになっていた。  それか、村から少し離れたところに通ったらどうかとも提案されていた。でもそうなると、今より通学時間が長くなる。何より小中まともに学校へ行っていない私が、いきなりここから離れた少し大きな学校に行って馴染めるのだろうか。校門の前で足が竦む自分が容易に想像できた。また行けなくなったら、今度こそ私は戻ることはもちろん、進むことも出来なくなる。当の私はどうするかまだ決めかねていた。  そんな中学二年になった年の初夏のことだった。家の蔵で、ある現象が起きはじめた。  それは、普通だったらとっても不可思議な事件で、じいちゃんは塞ぎがちになって、母さんは不安で眠れないほどだったけど、私には寧ろ懐かしさに触れるような出来事だった。
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