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聖がチラッと困ったように私を見る。 私は小さく首を横に振ったけど、頼むなのかごめんなのか、聖は一瞬顔の前で手を合わせ、 「じゃ、じゃあお願いしようかな」 極まり悪そうに言った。 信じられない。 私は、聖にずっと会いたくて、やっと会えて嬉しかった。 2人で久々にデートできると思っていた。 でも―― 私にとっては関係ない人たちでも、聖にとっては明日以降も関わっていく友達だもんね。 断れないのも、仕方ないのかな。 私も、聖と一緒に頭を下げた。 狭くて暗い室内を、ミラーボールが回る。 聖の友達の女子たちが、マイクを握りしめて韓国アイドルの歌を熱唱している。 「(あや)ちゃんは、聖の高校時代の同級生なんだよね」 「そうです」 「ぶっちゃけ、聖のことどう思ってんの?」 聖は女子に囲まれ、私は男子に囲まれ、デートらしいことができないまま、観光後は流れ込むようにカラオケにいた。 観光を楽しみにしていたから、行きたいところもメモしてあったけど、ほとんど行けずに終わってしまった。 それだけでも悲しいのに、聖の友達という前提で根掘り葉掘り聞かれるのも、悔しい。 「あ、えーっと…」 友達ってことになってるから、好きとか言うのも違うし…。 答えに悩んでいると、男子のひとりがこう言った。 「でもアイツって、ママ活やってるじゃんか――」 「おい、それは言っちゃダメなやつ」 他の人が慌てて口留めしたけど、聞こえてしまった“ママ活”という単語に心臓が飛び上がる。 ママ活って、大人の女の人とごはん行ったり大人の関係持ったりして、お金貰うアレだよね…? そんなことしてるなんて、聞いてない。 私はパッと聖の方を見た。 女子に腕を小突かれてヘラヘラ笑っている聖を見て、無性に苛立ちがこみあげてくる。
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