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私が修道院に入ることは両親も反対せず、俗世を離れた。
はじめは修道士のような厳しい生活をこなしていくことができるのかどうか不安だったけれども、まずは修道士見習いとして、修道院で生活をする。
その中で、畑仕事や炊事や掃除、他にも今までは使用人に任せていたようなことをたくさんやった。
けれども、なぜこんなことをしなければならないのだろうという気持ちは全く起きなかった。
修道院の修道士達はみな穏やかで、日々の雑事と祈りの中で、ゆっくりとした時間が流れていく。この修道院での生活はあまりにも私の気性に合っていて、この地を楽園と呼んでも差し支えのないほどだ。
この修道院に入ってしばらくして、修道院長から、この体格を見込んで僧兵にならないかという打診を受けたけれども、私は丁重に辞退した。信仰のために戦うことが立派なことだというのは痛いほどよくわかるのだけれども、戦の時に感じたあの恐怖を、殺されることよりも殺すことの恐怖を思い出してしまうと、僧兵などとても私には務まらない気がしたのだ。
それならばと私に与えられた役割は、聖歌隊。歌を歌うことには慣れていなかったけれど、いざやってみるとよく響くよい声だと好評だった。
歌を歌うのであれば、人を傷つけることもない。この役割を担うのであれば、この楽園のような修道院に骨を埋めようと決心できた。
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