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それと、あの後に冷は皆とメアドを交換した。拒絶されるかとも思ったが意外にも、嫌がる素振りも見せずに了承してくれた。
学校で授業が始まり、俺は真剣に先生が書いた内容をノートに書き留めていく。全部をそのまま書き写すのではなく、自分なりに分かりやすいようにノートに纏めるのがけっこう重要だったりする。
授業内容は始まったばかりなのに最初からかなり難しい。さすが偏差値が高い学校だけあって最初から生徒に一定以上の能力を必要とする授業内容だ。
さすがに授業中に周りを観察する余裕が無い。
だが、冷の後ろの席の生徒が小声でどうしよう、と発したので、授業に向けていた意識が、反射的に声を発した生徒の方に持っていかれる。
たしか、小森哲という名前の生徒だ。
小森はシャーペンの頭を何度もノックして慌てている。シャー芯が切れてしまったようだ。
不安そうな顔をして困っている。
どうしよう。授業中に俺が手を挙げて小森の席まで行ってシャー芯をあげるのも少し変だし、とどうやって助け舟を出すか悩み、授業と同時進行で思考を巡らす。
すると、冷が後ろを振り向きシャー芯の入ったケースを小森に渡し、「芯、1本差しあげます。とりあえずはそれでこの授業の分は事足りるはずです」と言葉をかける。
小森は緊張した顔で「あ、ありがとうございます…!」とお礼を言ってケースから芯を1本抜いてケースを冷に返す。
それを見ていた俺は意外に感じて数秒、思考が硬直した。
が、すぐに思考を再開し、冷の奴、自分から進んでよく知りもしない同級生に助け舟を出すんだな、と思う。
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