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幼稚園のときの黒歴史がじわじわと蘇るのを防ぐように、蓮の頬に添えられた両の手のひら。
熱い。
「小野くん、なに……?」
問いかけは再び唇に塞がれる。
何かを尋ねようと思っていたのに、熱い塊が全身をめぐり頭に靄がかかったようだ。
目を閉じかけては、ふるふると首を振る。
いや駄目だ、この腕から逃れなくてはと身をよじったつもりが、指先一つ動かなかった。
全身から力が抜けてしまったようだ。
「先生、好きです」
震える睫毛が、蓮の瞼をくすぐった。
驚くほど近くにある端正な顔に、蓮は我知らずみとれてしまう。
目の前の青年の薄茶色の瞳はわずかに潤んでいるだろうか。
無意識の動きだ。
蓮の手がつと宙へのびる。
薄茶色の髪に触れかけて、躊躇したように腕をおろす。
「だめだよ、離れて。だって俺は……」
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