全身包帯グルグル男女

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全身包帯グルグル男女

その動画を見終わった時、僕は寒気が止まらなかった。まず"ガミコロヤマオオカミ"が復活するという危機的状況もそうだが、僕にはもうひとつ状況が重なってしまった。 鏡に写る自分の姿を見つめる。 全身、包帯でグルグル。 ついこないだ、僕は火事に巻き込まれ全身に火傷をした。奇跡的に命を取り留めたが、当分包帯を外すことはできない。今僕が外に出歩いていたら、皆はどう思うだろうか。"ガミコロヤマオオカミ"の特徴を包帯で隠している。そう思うのではないだろうか。こうなった時の民衆の正義感の怖さを僕は知っている。集団で襲い掛かられる可能性もあるだろう。都市伝説的にささやかれていた"ガミコロヤマオオカミ"の存在と公開されたこの動画。世間に火がつくこと間違いなしだ。純粋に全身火傷で極限まで落ち込んでいたところに、これだ。ついていないとしか言えない。 そして、 僕はもうひとつ気になったことがあった。 この動画の配信者だ。"ガミコロヤマオオカミ"の特徴の口だけを見せ、それ以外の部分を隠してはいるが、声は特に変えていなかった。この声をどこかで聞いたことがあるような気がしたのだが、今そんなことはどうでもいい。まず食料問題。一人暮らし28歳の寂しい我が家には食料がなく、ずっと篭るわけにもいかない。むしろ世間が騒ぎ出す前に早めに買い出しに行っておいた方がいい。 「ウチらの姿、ヤバくね?」 ケータイには園子からメッセージが届いていた。園子も僕と同じ火事の被害者であり、全身とは行かないが、半身くらいの火傷を負っている。園子の家のベッドの上で僕らが、夜な夜な愛し合っていたところ、急に火が燃え広がってきたのだ。予想外のことに逃げ遅れ、裸だった僕らはとてつもない火傷を負ってしまった。いつもは僕の家に園子が来ることが多いのに、珍しく園子の家に行ったと思ったらこれだ。ちなみに、放火犯は未だに分かっていない。 「ガチでヤバい。外出れん」 そう返信し、窓から外をそっと眺めてみる。 1人の若者が耳にイヤホンをつけ、音楽に乗りながら歩いていた。するとその若者は急にこちらの視線に気付いたのか、首を急に回転させた。 目が合った。まずい。全身包帯の姿を見られた。急いで窓の範囲から外れ、床にへたり込む。ダメだ。今ので全ての気力をそがれた。外には絶対出られない。今日はやめておこう。とにかく、世間が落ち着くまで粘る。耐久戦だ。キッチン下にあったツナ缶をちびちび食べながら、その日を過ごし切った。 薄い布団の中から、遠くの空に再び獣の唸り声が聞こえたような、そんな気がした。
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