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正義の軍団ZZZ
外はTwitterの盛り上がりと比べて、そこまで騒がしいわけではなかった。世間の大半は意外と冷静なのだろうか。街にはごく普通のサラリーマンや学生たちが歩いている。なんとなく落ち着きがないような、そんな印象を受ける程度だ。おそらく今、僕が1番落ち着きがない。呼吸を整え、自然に歩くよう意識する。意識すればするほど不自然になる。体が硬い。意識を強め、ゆっくりと足を進めていく。奥の方に金属バットを持って周りをキョロキョロしている怪しい輩が見えた。"まさに"のやつが現れた。ああやって正義感を振りかざしているやつが怖いのだ。遠回りにはなるが、角を曲がり、金属バット野郎から距離を取る。
火事で園子の家がダメになり、一緒に不動産へ行き見つけた新しい家への道のりには、まだ慣れていなかった。やけに遠く感じる。いつもは徒歩15分くらいで着くのに、もう30分以上も歩いているような感覚だ。周りを見渡すと、ちょうど誰もいなくなっていた。いち早く園子に会いたい僕は、ここしかないと思い、猛ダッシュをした。なんだか解放感に溢れて気持ちがいい。なんだかスピードも出ている気がする。グングンと風を切って進んでいく。過ぎていく風景の中に一瞬、人影が見えたような気がした。その違和感を過ごすことができず、急ブレーキをした。左側を見ると、迷彩柄のジャージを着て、口元にタオルを巻いている新しい"まさに"のやつがこちらを見ていた。
「お前っ、何してる!待て!」
まずいまずい。やつの正義感に火がついた。グングンと僕との距離を縮めてくる。再び足に力を入れ、走り出した。このまま園子の家に飛び込もう。逃げ道はそこしかない。正義感に溢れたやつを巻くほどの体力はもう残っていなかった。太ももの倦怠感を感じながら、最後の力を振り絞る。見えた。園子の家だ。よし。走りながら片手でその子にメッセージを送る。
「かぎあけといてすぐはいる」
園子がメッセージを確認していることに全賭けし、ケータイを閉じる。腕を振り、足を蹴り抜く。ラストスパート。最後の角を曲がる。曲がる瞬間にやつを一瞬見る。この距離感なら間に合う。逃げ切れる。
「そ、そのこ!」
叫びながら園子のアパートのエントランスをくぐり、205号室目指して駆け上がる。201、202、203、204。よし。
"ガチャ"
扉はちゃんと開いていた。
助かった。勢いよく扉を開け、すぐに鍵を閉めた。疲れがドッと襲ってきた。そのまま玄関に倒れ込む。
「はあはあ。園子、助かった、はあ」
倒れ込んでいた目の前の床に、
複数人の人影が現れた。
「ん?」
「全身包帯グルグル男め!覚悟しろ!」
「すでに君の情報は全て開示済みだわよ」
「驚いているようだな。私たちが誰かって?」
「僕たちは"ガミコロヤマオオカミ"の復活を防ぐべく怪しい人物を取り締まっている軍団だ」
「そんなあたしたちの名は〜!」
『正義の軍団ZZZだっ!!』
"まさに"の集合体だ。
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