コーチと5連トンカチ

1/1
前へ
/7ページ
次へ

コーチと5連トンカチ

左から、ガタイのいいチョンマゲ頭のチビ、目の大きいマスク女、巨大アフロのサラリーマン、鼻の長いノッポ野郎、リスみたいな女。 「園子はどこだ」 「あの包帯女のことか!」 「さっきウチらが成敗させてもらったわ」 「怪しい人物は根絶やしだ」 「悔しいけど特徴持ちではなかったね」 「あたしらが世界を救うんだ!」 5人が矢継ぎ早に喋るので、間に入れない。こんなくだらない劇に構っている暇はない。一刻も早く園子を見つけ、一緒に隠居生活をしなければならない。 「園子はどこだって言ってんだ!!」 今発した言葉で、5人の顔の力が一気に抜けていくのが分かった。結局、ハリボテの奴らだ。 「お、おこるなって」 「そうよ、ウチらは知らないし」 「コーチに、言われただけだし」 「気になるんならコーチに聞けばいいじゃん」 「あたしたちは、悪くないもん」 「コーチってのはなんだ」 「なんか俺らに情報提供してくれたんだよ」 「活動もうまくいってなかったから、すぐ食いついたんだ、ウチら」 「包帯で特徴を隠した奴らがいる、って」 「住所と写真も送られてきてよ」 「あたしたちもよく知らないんだよ、ほら」 そう言いながらリス似のガールがメッセージの画面を見せてきた。そこには"コーチ"なるものから包帯カップルの情報と住所が送られてきていた。こいつは誰だ。こんなに恨まれることをした覚えは、もちろんない。 「そのコーチってやつが、園子を連れていった のか?」 「そうだよ」 「うん」 「そうだね」 「うむ」 「そー」 「いちいち騒がしいな。毎回5人とも喋りやがって。じゃあもう僕は行くからな、お前らも早く出てけ」 「待った!!」 「その包帯の下を見ない限りは帰せないわ」 「その通り。怪しい人物は根絶やしに」 「見せたら行っていいよ、見せたらね」 「あたしらに見せれるのかなあ〜」 「これは火傷だよ火傷。こないだ火事の被害にあったんだよ。痛くて剥がせないから勘弁してくれ」 「言い訳できてるつもり?」 「甘いわ」 「あまり見くびらないでほしいな」 「残念。強制チェックだね」 「じゃあいっくよーん!」 5人の後ろからトンカチのような影が見えた。 「は、待て、おい、やめろ!」 慌てて後ずさりをしたら、何かが足にあたった。小さい何かを踏んだ。 「痛いな、くそ。あっ…」 もう、その影は目の前に来ていた。 こいつらはハリボテのくせに、イカれた部分は剥き出しのままの、1番危険なやつらだ。 "ゴン" "ゴン" "ゴン" "ゴン" "ゴン" 5つの鈍い音が、 園子のいないその部屋に響き渡った。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加