解禁

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解禁

「10年前に突如、日本の森に現れたかと思うとあっという間に姿を消した、あの"ガミコロヤマオオカミ"の存在を覚えていますか?実は10年前、ヤツを捕らえたのは私なのです。驚いたでしょう?なぜ消えたのか、どこに消えたのか。国全体が間抜けに騒いでいる頃、私の家で実験させてもらいました。私は昨年、癌を宣告され、もういつまで生きていられるか分かりません。だからここで"ガミコロヤマオオカミ"についてのとっておきの情報を解禁させてもらうことにしました。日本中を混乱させて、成仏するというのも悪くない。突然のことで理解できていないでしょう。まずは落ち着いて、この話をちゃんと聞いてください。10年前、私は"ガミコロヤマオオカミ"の生態を調べ上げ、やつの体を5つに分けました。 「耳」「鼻」「口」「胴」「尾」 そして、その5つをそれぞれある人間に取り付けた。その人間たちは日本のどこかに、その特徴を隠して潜んでいる。特徴を持った彼らがひとつの場所に集まると一体何が起こるか。何だと思いますか皆さん。"ガミコロヤマオオカミ"が再び完全な個体として復活するのです。驚いたでしょう。これがヤツの性質なのです。取り付けられた5人はヤツの器であり、私のある合図で彼らには東京に集合し"ガミコロヤマオオカミ"を復活させろ、と命令してあります。さあ皆さん。"ガミコロヤマオオカミ"の出現した森の有様を覚えていますか?爆弾をひとつ落とされたようなあの悲惨な森の姿を覚えていますか?今回の舞台は東京です。さてどうしますか?皆さんにできることは、彼ら5人が集まってしまう前に防ぐ、この他にありません。国の団結力が問われますね。てな感じでそろそろ合図の方いかせてもらいますよ、選ばれし5人の皆さん。いや、4人ですかね。なぜなら私が…その1人ですから。ほら。見てくださいよ私の口を。どこからどう見てもヤツの口でしょ?はは、これで信じてもらえましたか?では、そろそろです。残りの4人の皆さん、あとは頼みましたよ。 "ガミコロヤマオオカミ"を解禁してください」 その瞬間、遠くの空から獣の唸り声が聞こえたような、そんな気がした。
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