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そして、翌日。
朝から王国内は賑わっており、さすがは王国一のお祭りというだけはある。ヤーノルド伯爵領の方もかなり賑わっていたが、王都の賑わいはそれ以上だ。そんなことを考えながら、セイディは呆然とレースのカーテン越しに窓の外を見つめていた。そうすれば、セイディがいる部屋の扉がノックされる。……そろそろ、移動時間だろうか?
「……はい、どうぞ」
そう返事をすれば、扉がゆっくりと開き、顔を見せたのは――ジャックだった。その後、彼は「今日一日、よろしく頼む」と言ってくる。……どうやら、セイディの様子を見に来たついでに挨拶をしに来たらしい。それを察したため、セイディは「こちらこそ、よろしくお願いいたします」と頭を下げて返した。
いくら易々と頭を下げるなと言われていたとしても、ジャックは魔法騎士団の団長であり、筆頭公爵家の令息なのだ。とてもではないが、今のセイディでも敵うような相手ではない。
「……その衣装」
「どうでしょうか? 変じゃ、ありませんか?」
ジャックがセイディの衣装を見て、何かを言いたそうにする。なので、セイディは首をかしげながらそう言ってみた。今日の衣装はこの間身に着けたものよりもいくらか豪奢になっている。こういうのを完全体といえばいいのだろうか? そんなことを思いながらセイディがジャックを見据えれば、彼は「……まぁまぁ、だな」と言う。まぁ、それがきっとジャックなりの褒め言葉なのだろう。
「聖女の姿を見るのは、初めて、か」
「そういえば、そうですね」
部屋に入りながら、ジャックはそう言ってくる。そのため、セイディは同意した。普段は私服のワンピース、もしくはメイド服を身に纏っていることが多いし、こういう衣装を着るのもあの時を除いてかなり久々である。つまり、ほとんどの人がセイディの聖女姿を見たことがないということになる。
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