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「貴方は、貴方のままで良いのですよ。気弱で、度胸がなくて、そのくせ傲慢でプライドが高くて。……私の、大嫌いなままの貴方でいてください」
「……なんだ、それは」
セイディのその言葉を聞いて、ジャレッドが発したのはそんな言葉だった。セイディの言葉を聞いた、ジャレッドは口元を緩めながら「バカなのか?」とセイディに声をかけてくる。……どうやら、彼は完全に元に戻ったらしい。
「僕が気弱で度胸がない訳、ないだろう。傲慢でもない、プライドだって……人並みだ」
「嘘をおっしゃらないでください」
ジャレッドの震える声を聞いて、セイディはそう言う。ジャレッドの表情は、何処か憑き物が落ちたような。そんな清々しいような表情だった。そのため、セイディはそんな彼の頭を撫でる。……今まで、触れ合おうともしなかった。でも、今ならば彼にこうすることが、出来るような気がしたのだ。
「……セイディ」
「はい」
「……久しぶり、だな」
その「久しぶり」は、彼の意識が完全に戻ったという証拠のような気がした。だからこそ、セイディは笑って「最悪の再会、でしたね」と言う。
「……僕は、セイディのことを捜していた」
「そうですね、知っています」
「……戻って、きてくれるか?」
先ほど、戻らないと言ったのに。そう思うからこそ、セイディは綺麗な笑みを浮かべる。その表情を、ジャレッドはどう受け取ったのだろうか。静かに息を呑んでいた。そのため、セイディは言うのだ。
「絶対のぜーったいに、嫌です」
と。
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