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「そもそも、私、先ほど、嫌だって言いましたよね?」
目を瞑って、セイディはジャレッドにそう告げる。そうすれば、彼は「くっ……」と言うような声を上げていた。どうやら、聞こえていないフリをしていたらしい。そんなジャレッドを呆れた目で見つめ、セイディはミリウスに「ジャレッド様は、どうなりますか?」と尋ねてみる。
「……そうだなぁ。詳しいことはまだ不確定だが、とりあえず取り調べを受けてもらうことになる、と思うな」
「そう、ですか」
「まぁ、多分身分はく奪程度の処罰だろう」
あっけらかんとミリウスはそう言うものの、ジャレッドは顔を引きつらせていた。それを見つめながら、セイディは「当然の報いだ」と思ってしまう。いくらアーネストに操られていたとはいえ、彼は代表聖女を襲うというかなりの罪を犯したのだ。そんな簡単な処罰で済むはずがない。
「せ、セイディ! なんとか、言ってくれ!」
ジャレッドはそう言うものの、セイディはにっこりと笑い「私では、なんともできませんので」と言うだけにとどめておいた。実際、そうなのだ。処罰を決めるのは裁判であり、セイディの意見で左右されるわけがない。だからこそ、セイディが何かを言ったところで無駄なのだ。
「……さて、ジャレッド・ヤーノルド。とりあえず、お前のことを連行する。……その後、いろいろと吐いてもらうぞ」
「ぼ、僕は何も知らないっ!」
その言葉は、真実なのだろう。が、取り調べを行わないという選択肢はない。それが分かるからこそ、セイディは視線で「観念してください」と言っておいた。まぁ、ジャレッドは往生際が悪いので、そう簡単には諦めないだろうが。未だにセイディに縋るような視線を向けているのが、何よりの証拠だ。
それからしばらくして、アシェルが数人の騎士を連れてやってきた。彼は「セイディ、団長、無事か?」と問いかけてきた。そのため、セイディはゆっくりと頷いた。……ミリウスが守ってくれたこともあり、自分は傷一つ負っていない。それはアシェルにも分かったらしく、無傷のセイディを見てホッと息を吐いていた。
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