アーネスト、現る(1)

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「じゃあ、とりあえず連行してくれ」  アシェルの指示に合わせ、騎士たちがジャレッドのことを担いで運んでいく。セイディの想像通りジャレッドは諦め悪く「僕は何も知らない!」と言っていた。……たとえそうだとしても、見逃すことは出来ない。心の中でジャレッドに手を合わせ、セイディはアシェルとミリウスに向き合った。 「……これで、一応ジャレッド・ヤーノルドの件は解決……か」  そうぼやくアシェルの声を聞いてか、ミリウスは「いや、まだまだだ」と言って視線を遠くに向ける。遠くでは民たちの騒がしい声が聞こえており、やはりこの出来事に戸惑っているようだった。ジャレッドの襲撃。それにより、民たちは明らかに動揺している。このままだと……不安が王国中に広がるかもしれない。きっと、ミリウスはそれを危惧しているのだろう。 「それに、あのアーネストという男を何とかしないといけないからな。……あれだけの魔法を操れるんだ。早く何とかしないと、あの男みたいな被害者が出てくるぞ」  ミリウスの言うことは、正しい。セイディにも、それだけは分かった。ジャレッドはアーネストに心の弱い部分を付け込まれ、操られた。ならば、彼のように心に弱い部分を持つ人が、今後も付け込まれる可能性がある。そうならないためには、早くにアーネストを確保する必要がありそうだった。 (けど、アーネスト様は皇帝陛下のお気に入りで、相当な実力者。……そう簡単に、確保できるわけがないわ)  ジャックと対等にやり合っていた。それだけで、彼の実力が確かなものだと分かる。アーネストを確保するのも難しい、かといって、放置するのはリスクが高すぎる。全く、面倒な状態だ。そんなセイディの考えは、ミリウスやアシェルにも理解できたのだろう。彼らもなんとなくだが疲れたような顔をしている。
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