アーネスト、現る(1)

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「……まぁ、あの男のことは後で考えるか。今は、とりあえず『光の収穫祭』を続けることに専念しないとな」 「あぁ、そうだな。セイディ、行くぞ」 「は、はいっ!」  アシェルの言葉にミリウスが反応し、セイディの手首を掴んでそのまま歩き出す。その所為で、セイディはミリウスに引っ張られるような形になってしまった。後ろからアシェルの「団長!」というようなミリウスを咎めるような声が聞こえてきたが、それくらいでミリウスがへこたれるわけがない。彼はさっさと歩きながら、セイディのことを連れ出す。 「……あ、あの、ミリウス、様……?」  ミリウスの横顔を見上げながら、セイディはそう声をかける。そうすれば、ミリウスは「……あそこは、危ない」と静かな声でセイディに告げてきた。……それは、一体どういう意味? そんな疑問を抱いたが、大体のことは分かる。きっと、ミリウスが言いたいのは――……。 (アーネスト様かジョシュア様が、あの側にいらっしゃるということ、よね)  多分、そういうことだろう。そう思い、セイディがミリウスに手を引かれ歩いていると、前から聞きなれた足音が聞こえてきた。……先回り、していたのだろうか。はたまた――自分たちの行く場所で、待ち伏せしていたのだろうか。そう思いながら、セイディは目の前を見据えた。 「……お出まし、か」  そして、ミリウスのそんな声がセイディの耳に届いた。
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