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「殿下も、無理を言うだろう。……わざわざ、こんなことを頼んで」
「ミリウス様は、いつもあんな感じですから」
「……お前も、殿下の無茶ぶりに慣れてしまったのか」
ジャックはため息をついた後、そんなことを零す。……相変わらず、セイディのことは「お前」呼ばわりである。それでも、もう特に突っ込む気は起きなかった。ジャックはこういう人物なのだと、分かったからだろう。それに、最初に比べればまだ話してくれるようになったはず……である。
「騎士や魔法騎士たちは、最低限を除いて王都の警護に出てしまっている。……あまり、勝手に突っ走るな。絶対にだ」
「承知しております」
どうやら、こういう面ではセイディは信頼できないと思われているらしい。まぁ、全く構わないが。
そんなことを考え、セイディは「……今日の私は、聖女ですからね」と零した。
リリスは、もう側にはいない。あんなにも馴れ馴れしかったフレディも、いない。面倒を見てくれた神官長も、いない。
そんな不安だらけの空間だが、それでも今は前向きに自らに与えられた任務をこなすしかないのだ。……自分は、今年の代表聖女なのだから。
「あの男が、どう仕掛けてくるか、だな。……俺はお前のことを守る。ただ、それだけだ」
「……あまり、危険なことは」
「この三日間は、俺よりもお前の命が優先される。たとえ俺が死んだところで、名誉の死だろう」
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