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セイディの通っている道は、人気のない道だった。そのため、民たちに怪しまれる心配はない。かといって、安全とは言い難い。もしも、ここでジョシュアがやってきたら。きっと――自らは、助からない。
(人気のある道に行くのが、安全なのよね。だけど……そんなこと、出来ないわ)
そんなことを考えたからこそ、セイディは人気のない道を通り続けることを選んだ。リオが待っているという場所は、全力で駆ければきっと十分もかからずにたどり着くだろう。……幸いにも、今のセイディの頭の中には騎士たちがいる場所がある程度入っている。……努力してよかった。心の底から、そう思えた。
(ミリウス様……どうか、ご無事で)
あのアーネストの様子を見ていると、無傷ということは無理だろう。それが分かってしまうからこそ、悔しさが増すのだ。……自分も、戦えるようになりたい。その思いが、胸の中で燻り続ける。……本当に、役に立たない自分が嫌いだった。
「……ミリウス、さ、ま」
ゆっくりとミリウスの名前を呼び、セイディは立ち止まる。この衣装で走るのは、やはり無謀だったのか。身体が、重苦しい。ここで体力を使い果たすわけにも、いかないのに。そう思って息を切らせていれば、誰かの足音が聞こえた。
(……誰?)
この足音は、ジョシュアやアーネストではないような気がした。何処となく優雅であり、気品のある歩き方。一定の間隔とスピード。それはまるで、狂いなど許さないとでも言いたげなリズムだった。聞いていて、心地いいような。いや、今ここでのんきに休憩している場合ではない。そう思い直し、セイディがもう一度駆け出そうとした時だった。
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