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(ミリウス様、大丈夫、かしら……?)
走っている最中、そう思ってしまう。が、今は人の心配をしている場合ではないと思い直し、セイディは走った。聖女の衣装は走ることを考慮して作られていない。だからこそ、走るのが大層難しい。それでも、ミリウスのためにも、逃げなくては。……そうだ。そうに、決まっている。
(……それにしても、先ほどのクリストバル様は……)
それと同時に頭の中に思い浮かぶのは、先ほどセイディのことを助けてくれたクリストバルという男性のことだった。ふわりとした美しい銀色の髪を持つ彼は、セイディのことを知っているようだった。……自分は、彼のことをこれっぽっちも知らないのに。
(ううん、無駄なことを考えていてもダメよ。……今は、自分のことを考えなくちゃ)
腕時計を見れば、まだ時間はある。リオの元に駆けつけ、神殿巡りを再開しても問題ないはずだ。そう思っていれば、目の前から見知った顔が走ってくる。……リオだ。
「セイディ!」
「リオ、さん?」
どうして、彼がこちらに向かってきてくれているのだろうか。そんなことを思いセイディが目を丸くすれば、リオはセイディの元に駆けよってきてくれた。その後、「大丈夫?」と問いかけてくる。
「だ、だいじょう、ぶ……で、す」
「全然、そうは見えないわ」
確かに、今のセイディは息を切らしているということもあり、全く大丈夫そうには見えない。が、セイディは顔を勢いよく上げ「み、ミリウス様が!」とリオに声を叫ぶ。その声を聞いたためだろうか、リオは「大丈夫よ。まずは貴女が落ち着きなさい」と言いながら首を横に振る。
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