導き(1)

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 その後、リオに背負ってもらえば、リオは軽々しくセイディのことを運んでくれる。……自分は、重くないだろうか? 間違いなく、重いだろう。聖女の衣装もかなりの重量があるし、セイディ自身も平均的な体重はある。……リオの負担に、なっていないと良いのだが。 「あ、あの、重くない、ですか……?」 「全然。大丈夫よ~」  背負われているセイディからでは、リオの表情は見えない。でも、聞こえてくる声音からリオの言葉は真実なのだと分かった。……ありがたい。そう思いながら、セイディはようやくゆっくりと考えることが出来た。 (アーネスト様は、正常じゃない。あの状態だったら……壊れてしまうわ)  アーネストのことは易々と許せそうにない。ただ、一つだけ思うことがあるのだ。アーネストにも、彼のことを大切に思う人たちがいるのだろうと。だから、アーネストが死ぬことまでは望んでいない。……少なくとも、反省してほしいと思っているくらいなのだ。あと、王国から手を引いてほしい。そう、思っているだけだ。 (それに、あのクリストバル様のことがやっぱり気になってしまう……)  慈愛に満ちた、男性だった。それに、彼に注がれた光の魔力は凄まじいものだった。……だが、そこで一つの疑問が脳裏に浮かぶ。……光の魔力は、普通ならば男性が使うことは出来ない代物である。 (……クリストバル様は、間違いなく男性。じゃあ、どうして光の魔力が使えたの?)  こういう時に、自らの無知が恨めしい。そう思いながらセイディが下唇を噛みしめていれば、リオが「どうしたの?」とセイディに声をかけてくれた。そのため、セイディはゆっくりと口を開いた。もしかしたら、リオならば何かを知っているかもしれない。そんな期待を、仄かに抱いて。
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