導き(2)

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「えぇっと、私、不思議な男性に助けられまして……」  そのため、セイディは先ほどの出来事を事細かにリオに説明した。光の魔力を持つ男性がいたということ。彼は自分を助けてくれたこと。そして、「クリストバル」と名乗ったということ。そこまでを説明すれば、リオは「ふぅん」とだけ相槌を打ってくる。が、すぐに「……分からないわね」とボソッと言葉を零していた。 (やっぱり、リオさんも分かるわけがないわよね)  こんな不可解極まりないことの理由を、リオが知る由もない。心の中でそう思いながらセイディが落胆していれば、リオはふと足を止める。そのまま視線を上に向け、空を見上げた。 「……でも、一つだけ言えることがあるわ」  リオのその言葉は、とても静かで、とても気品のある声だった。いつもとは違うその雰囲気に、セイディは息を呑む。そうしていれば、リオは「多分、その人物はクリストバル・ルカ・ヴェリテという人物よ」と続けた。 「……え? でも、分からないって……」 「そうね。だけど、その人物の正体は分かるわ。ヴェリテ公国のトップの人間……つまり、公爵。彼ならば、光の魔力を使いこなせる」  その後、ゆっくりとリオはまた歩を進めた。……クリストバル・ルカ・ヴェリテ。ヴェリテ公国のトップの人間で身分は公爵。セイディの脳内でそんな言葉が反復し、いろいろなことを考えてしまう。それに、分かってしまった。リオが言った「分からない」の意味が。 (リオさんは、多分クリストバル様が私を助けた意味が分からない、とおっしゃったのだわ)
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