導き(2)

3/4
前へ
/193ページ
次へ
 きっと、そういう意味なのだろう。確かに、それならば意味が通る。実際、あの人物がクリストバル・ルカ・ヴェリテだったとしても、彼にはセイディを助けるメリットがないのだ。あの場でセイディが野垂れ死んだところで、デメリットさえないのだ。ヴェリテ公国は公国ながらに世界でも有数の発言権を持っている。リア王国に頼る意味もない。  そんな風にセイディが様々なことを考えていると、リオが足を止め「ここでいい?」と問いかけてきた。耳をすませば、確かに人々の騒がしい声が聞こえてくる。これ以上背負われて歩くのはリスクが高い。それはセイディにも分かったため、「分かりました」と言ってゆっくりと地面に足をつけた。 「……あのね、セイディ」 「どう、なさいましたか?」 「導きって、信じる?」  突然の問いかけだった。その所為で、セイディは驚き目を見開く。そんなセイディを気にすることもなく、リオは「……神様の、導き」と言葉を続けた。 「……こんなことを言ったら笑われるかもしれないわ。けど、私には導きにしか思えないのよ」  一歩足を踏み出して、リオはそう言う。そのままゆっくりとセイディの方に視線を向け、彼は口元を緩めた。その際にふわりとした風が吹き、リオの髪を揺らす。……その姿は幻想的なほどに、美しかった。 「クリストバル様がセイディのことを助けてくれたのは、きっと導きなのよ」
/193ページ

最初のコメントを投稿しよう!

721人が本棚に入れています
本棚に追加