導き(2)

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 澄んだような声で、そう言われる。その所為で、セイディは何も言えなかった。導きなんて言われたところで、困ってしまうのだ。セイディは神様をまぁある程度信じている。でも、神頼みなんてほとんどしない主義だ。現実主義者といえばいいのだろうか。まぁ、ともかく。そういう性格だった。 (……導き。それは……もしかして)  いや、その可能性は明らかに低いだろうな。心の中でそう自分に言い聞かせ、セイディは首を横に振る。自分が考えていたあの可能性は、きっとない。だから、考えるだけ無駄だ。そう思い、セイディはゆっくりと「リオさん」と彼の名前を呼んだ。 「どうしたの?」 「……私、きちんとやりますから。聖女の仕事も――メイドの仕事も」 「そう」  一体いつまでメイドを続けられるのかは分からない。それでも、与えられた仕事は全うするしかない。それはセイディだって分かっているし、それが間違ったことではないということも分かる。 「……じゃあ、行きましょうか。団長のことは、心配だけれどそれよりも今はやることがあるわ」 「分かっています」  一度だけ俯き、肺いっぱいに空気を吸う。まっすぐに空を見上げ、息を吐く。落ち着け、落ち着け。まだ、焦る時じゃない。 (そうよ。ジャレッド様だって何とかなったじゃない。……私は、負けたりしないのよ)  一歩を踏み出し、セイディは自分にそう言い聞かせた。負けない。アーネストにも、ジョシュアにも。そして――マギニス帝国の皇帝にも。そもそも、負けるのは嫌いだ。諦めるのは――もっと、嫌いだ。 「行きましょう、リオさん」 「分かっているわよ」  まだまだ、やることはたくさんある。今日だって、終わっていないのだ。 (導きだろうが何だろうが、クリストバル様は私のことを助けてくださったわ。……その恩に、いつか報いたい)  そのためには、生きるしかないのだけれど。心の中でそう唱え、セイディはまた一歩一歩、踏みしめるように足を前に出していた。
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