夜の訪問者(※変な意味ではない)

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(はぁ、無事とは言い難いけれど、何とか終わってよかったわ……)  そして、その日の夜。太陽がすっかりと沈んだ頃、セイディは王宮で与えられた部屋に戻ってきていた。あの後、リオに護衛を務めてもらい無事神殿巡りを終えた。もちろん、いろいろと大変なことはあったし、誤魔化すのも大変だった。しかし、今の自分に出来ることはそれだけだと思い直し、セイディは必死に役目を遂行した。その選択に後悔はないが、それでもいろいろと思ってしまうことはあるものだ。 「……ジャレッド様も、どうなさっているのかしらねぇ。ミリウス様も、無事だと良いのだけれど……」  思うことの筆頭。それは、ミリウスの心配。それからジャレッドのことだった。ジャレッドは王宮で取り調べを受けているというし、ミリウスに関してはあの後連絡がないという。ミリウスのことだから心配をする必要もないと思っているが、やはり心配する気持ちが消えない。それは、どうして? この数ヶ月、関わってきたから情が移っているのだろうか? なんて、ミリウスだってセイディに心配されることは望んでいないだろう。彼が望むのは、この王国の無事なのだろうから。  そんなことを考えていると、不意に部屋の扉がノックされる。それにハッとしセイディが返事をすれば、扉がゆっくりと開く。そこから顔を見せたのは、ジャックで。彼は辺りをきょろきょろと見渡した後、「いいか?」とセイディに声をかけてくる。だからこそ、セイディは「どうぞ」と言って用意された応接ソファーに近づいていく。 「どう、なさいましたか?」  それにしても、ジャックが訪ねてくるなんて珍しいな。しかも、こんな夜に。ジャックのことだから無駄話をしに来たわけではないのだろう。そう思い、セイディは真剣な表情を作る。そうしていれば、ジャックは応接ソファーに腰かけると、「お前の、元婚約者のことだが」と言い言葉を切った。どうやら、彼はジャレッドの話をしに来たらしい。 「ジャレッド様が、どうなさったのですか?」 「……お前に会いたいと言っている」
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