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「……ミリウス様、ご無事だったのですね……!」
「あぁ、俺、これでも丈夫だし」
ふわぁ。そんな大きなあくびをしながら、ミリウスはセイディのことを見下ろしてくる。その態度は、いつも通りののんきなものだ。そのため、セイディはホッと息をつく。そんな態度のセイディを見てか、ミリウスは「心配、かけたな」と小さな声で言ってくれた。
「……おっ、セイディはジャックと一緒か」
それから、ミリウスはセイディの後ろにいたジャックに視線を向け、けらけらと笑いながら「お前も、セイディに懐いたな」なんてからかうような声で言ってくる。そのためだろうか。ジャックは「……そんなわけが、ないだろ」と消え入りそうなほど小さな声で言葉を返していた。
「ところで、殿下。いろいろと大丈夫だったのか?」
「……まぁな。ただ、アーネストの奴は取り逃がしたな」
ジャックの言葉に、ミリウスは少し悔しそうに唇を嚙んだ後、そう告げてくる。アーネストのことは捕まえられなかった。その単語にジャックが少しがっかりとしたのが分かったが、セイディにとってそれよりもミリウスが無事だったことの方が重要で。セイディは思わず「……それよりも、ミリウス様が無事で、よかったです」と零してしまう。
「俺はそう簡単に死なないからな。……ただ、アーネストの奴に関しては心配だな」
「……殿下?」
「アイツ、身体強化の魔法をバカみたいにかけてやがった。……あれ、代償が来るぞ」
ミリウスの真剣なまなざしに、ジャックが怯んだのが分かった。
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