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セイディも、ミリウスと同じ心配をしていた。あのままだと、アーネストはろくなことにならない。けど、セイディは善人ではない。アーネストのことを助けたい、とは思えない。助けようと思えば、助けられるのだろう。でも……どうしても、許せないのだ。リリスへの仕打ちや、王国にしたことに関してを。
「……アーネスト様」
だけど、許せないことと破滅を願うことはイコールでは繋がらない。もしも彼が助かって罪を償うというのならば、それはそれで応援するつもり……なのかも、しれない。自分の気持ちが、これっぽっちも分からない。そう思い、セイディはただ目を伏せた。
「ま、なるようになるだろ。俺はとりあえず着替えてくるからな。……じゃあな、セイディ、ジャック」
そんなセイディを他所に、ミリウスは颯爽と場を立ち去ってしまう。そんな彼の後ろ姿を眺めるセイディに対し、ジャックは「行くぞ、時間がない」とセイディに声をかけてくる。動かなくちゃ、時間がないのだから。分かっている。分かっているのに……足が、上手く動かない。
「おい」
「あっ、はい」
ただ、ジャックに迷惑をかけることは憚られる。そう考え、セイディは重い足を前に動かし、ゆっくりと歩を進めた。……今は、アーネストのことよりもジャレッドのことだ。心の中で、自分自身にそう言い聞かせた。
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